約2年半ぶりに模型製作を再開するにあたり、刀の錆を落とすというような意味でエアブラシのメンテナンスをやっていきます。それに合わせてエアブラシの種類やその選び方なども合わせて解説してみたいと思います。
エアブラシについてのTips
この記事の目次
- エアブラシ種類について
- 初心者が最初に買うべき一本
- エアブラシのトラブルってどんなこと?
- エアブラシのメンテナンス解説
エアブラシはクオリティの高い作品作りには欠かせない道具です。でも模型初心者の方にとっては導入コスト面や技術面、メンテナンスの手間など、様々な要因からなかなか敷居の高い道具なのではないでしょうか。今回は主にそのメンテナンスに焦点を置きながらエアブラシの種類、最初に選ぶべきエアブラシなどについて書いてみたいと思います。
エアブラシ種類について
そもそも一言にエアブラシと言っても機構の差、カップの形式、ノズルの口径などなど、それらの要素の組み合わせによって無数の種類が存在します。まずはそれらのエアブラシを簡単に解説してみます。
1. シングルアクション
シングルアクションのハンドピースは噴出量をボタン押し操作と後部のスクリューによるニードルの出し入れによって操作します。パーツの構成が単純なため比較的安価でメンテナンスも楽なのですがそれ以外のメリットはほとんどありません。操作を両手で行わないといけないので片手に目的物を持っている場合にいちいちそれをおく必要があります。またニードルを戻し忘れると塗料が垂れてくるなど、正直、あまりお勧めできないハンドピースです。
2. ダブルアクション
模型製作では最も多く使われているのがこのタイプのハンドピースです。空気の流量を調整するボタンの上下の動きと塗料の流量を調整する前後の動きを片手で行うことができ、細吹きからベタ塗りまでフレキシブルに対応できる万能ハンドピースです。パーツ構成が複雑でその分若干高価な上、メンテナンスも少し面倒ですという点が難点です。
3. トリガーアクション
トリガーの引きしろによって塗料の流量を調整するタイプのパンドピースです。トリガーは少しでも引くとエアーが前回となるのでエアの調整はできません。このタイプは上の2つと比べて格段に操作が楽です。長時間使用していても指が痛くなりにくいのが特徴です。ベタ塗りをメインの用途とすればありなのではないかと思います。カーモデルで言えば大きなベタ塗り面のある1:12モデルのカウル塗装なんかに威力を発揮しそうです。ただ細かな塗装がしにくいのと、比較的高価でメンテナンスの手間も高めになります。メインというよりは用途を限った2本目には良いかもしれません。
上記の操作方法違いの3種類に加え、それぞれにカップが一体型or分離型、塗料は吸い上げ式orドロップ式、またはノズルの口径の差など様々な要素が加わり、その選択肢は無数にあります。
最初のハンドピースはこれを買っておけ!
「もう種類が多すぎてどれを買ったらいいかわからん!」そんなあなたにお勧めの一本を紹介します。
- ダブルアクション
- カップ一体型
- ノズル口径:0.3mm
上記3つの条件を満たしたハンドピースであれば、大抵のカーモデルはこの1本で事足りるはずです。細かなパーツの塗装から1:20くらいのスケールならカウルの塗装まで難なくこなしますし、0.3mmのノズルであれば、もしお持ちのコンプレッサーがプチコンであったとしても吹くことが出来ます。(これ以上の口径ですとプチコンでは厳しい)。またカップ一体型であればメンテナンスも少し楽になります。もし、1:12のF1を製作したいとなった場合は追加で0.5mmのハンドピースを加えることでさらに作品の幅が広がるでしょう。
エアブラシのトラブルってどんなこと?
どんな高級なハンドピースでも使い方を誤ったり、メンテナンスを怠ったりすることでさまざまなトラブルを抱えてしまいます。エアブラシによくあるトラブルは以下の通り。
- 塗料の色がおかしい
- 塗料が出ない
- エアが漏れている
- 塗料が飛び散る
- 水が出る
順番に解説をします。
1の「塗料の色がおかしい」はハンドピース内の残存塗料が新しい塗料と混ざってしまうことが原因です。特にホワイトなどの薄い色が影響を受けやすいです。またメタリック塗料のラメが混じることもあります。
2の「塗料がでない」は塗料に対して溶剤を間違え(エナメル塗料のアクリル溶剤)たり、塗料の濃度が適切でなかったり、エアブラシの組み方が間違っていたり、ノズルが詰まっていたりすると起こります。
3の「エアが漏れている」はパッキンが劣化して割れていたり、グリスが切れていたり足りなかったりすることで起こります。
4の「塗料が飛び散る」は針が曲がっていたり、組み立てのミス(ニードルが先端まで押し込まれていない)などの原因で塗料がニードルカバーに溜まってしまうことで起こります。
5の「水が出る」はコンプレッサーの圧力で空気中の水分が結露し、水滴を生み出してしまうことが原因です。これはレギュレーターをつけたり、湿度の高い日を避けたりすることである程度防げます。
エアブラシのメンテナンス解説
上記トラブルの1~4に関しては正しいメンテナンスで防げることが多いです。ここからはエアブラシのメンテナンスを解説します。今回は先ほどお勧めしたダブルアクション・カップ一体型、0.3mmを例にメンテナンスを行っていきたいと思います。
メンテナンスの手順
- メンテナンスに使う道具を用意する
- うがいをする
- 分解をする
- ブラシで掃除する
- 組み立てる
順番に解説します。
1. メンテナンスに使う道具を用意する
- 綿棒
- ウェス
- ツールクリーナー
- スプレーワーク エアーブラシ用クリーニングセット
補足:ツールクリーナーの匂いが苦手という方はT-13m マイルドツールウォッシュという嫌な匂いを抑えめにした物も販売しています。
2.うがいをする
ハンドピースのカップの中に少量のツールクリーナを注ぎ、ニードルカバーをウェスで塞ぎながらエアを出して下さい。そうするとエアが逆流をしてぶくぶくと泡が出てきます。しばらくぶくぶくしたらツールクリーナーをウェスに向かって吹きましょう。この作業をツールクリーナーが透明になるまで繰り返します。
3.分解する
最初にうしろのキャップを外し、丁寧にニードルを引き抜きましょう。分解の手順で注意すべきことはこのニードルをノズルの扱いです。どちらもとても繊細なパーツなので丁寧に分解作業を進めましょう。
4.ブラシによって掃除する
スプレーワーク エアーブラシ用クリーニングセットについている2本のブラシで掃除をします。まずはノズル側からツールクリーナーを染み込ませたクリーニングブラシ極細を挿入します。ボディの先端から挿入し、ゆっくり前後に動かしたり回転させたりしてください。
クリーニングブラシ(極細)
汚れがひどい場合は一度ブラシを洗浄しこの作業を繰り返します。塗料が根元まで来てしまっている場合はクリーニングブラシ中をボディの後ろから挿入に汚れを落とします。
クリーニングブラシ(中)
5.組み立てる
ノズルのスクリュー部にほんのわずかだけノズルシールを塗布します。この時ノズルの内部にシールが入らないように注意しましょう。このシールはノズルの固着やエアー漏れを防ぐ効果があります。こんな小さな入れ物ですが一生かかっても使い切れないくらいの量です。
次は青い蓋のグリスを使って各スクリュー部をグリスアップします。この作業もシール同様に固着とエアー漏れを防ぎます。ダブルアクションの場合はボタンのメインレバーもグリスアップをしましょう。
ボタンパーツには前後の向きがあるので組み立ての際はご注意ください。赤く示した部分がくぼんでいて、このくぼんだ方が後ろになります。
まとめ
一通り組み終わったら作業終了です。なかなか大変な作業ですよね。この作業はどのくらいの頻度で行えばいいのかについてですが、私の場合はメタリックの粒子を完全に無くしたいカウル塗装の前とかに行います。道具に対する感謝の気持ちをこめて、定期的に道具をメンテナンスすることでより良い作品作りに繋がります。
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